"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
反応の薄い俺に困ったように彼女が笑った。
「酒井ちゃんが今何をしているか気にならない?」
酒井が今、何をしているか。
そういえば、今日の彼女はどことなくよそよそしくて様子がおかしかった。二人の時は比較的いつも通りなのに千葉崎が関わると変だった。
思わず、もしかして千葉崎のことを意識し出しているんじゃないかとさえ思ってしまったりもして、気になった。
最近は二人で連絡を取る機会も増えているらしいし、今は千葉崎と一緒にいてもおかしくはないかもしれない。
そうだとしたらまた気になってしまうが、今目の前にいる彼女の事情を知りたくないこととは別だ。
好きだから知りたいというのは一理あるが、好きだからこそ知りたくないというのもある。
「私はとっても気になるタイプで、洋ちゃんが教えてくれないことは自分で探っちゃったりするの。だからね。今日が何の日で、あの花束を誰にあげるのか知っているし、その意味もちゃんと分かってるんだよ」
空から降り注ぐ太陽の光は眩しく、肌がヒリヒリする。
また倒れやしないかと不安になった。
帽子も被らず、いつも通り長袖を着て今この場にいるからという理由だけじゃない。
笑顔のはずで、しっかりと地面に足をつけているはずなのに、今にも崩れ落ちそうなほど彼女は脆い気がするんだ。