"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
「私ね、昔は向日葵の花が大好きだったけど、今はちょっとだけ嫌いなの」
彼女の真っ白な手が優しく花びらに触れる。
青空の下の太陽はとても鮮やかな色をしていて、それが逆に彼女の儚さを更に強調しているようだった。
「だってこの花は洋ちゃんが愛する人に捧げる花だから」
ドクンと心臓が嫌な音を立てる。
琴音はいつものようにはぐらかしてはくれなかった。
"あなただけを見つめる"という素敵な花言葉。
ただ見つめるわけじゃない。
あなただけ、という限定。
それってまるで永遠の愛の告白だ。
それなのに、妻であるはずの彼女には渡されなかった向日葵の花束は別の人に渡される。
琴音以外に誰が渡されるに相応しいというのか。
俺の心は酷く荒れ狂っていた。
そうとも知らず、彼女は続けた。
「この花はね、洋ちゃんの奥さんとその奥さんとの間に生まれた息子さんに捧げる花なの」
暑さで頭がやられたのか、足元がグラグラしているように感じ、必死で踏ん張った。
奥さんと子供。
相沢琴音は相沢大洋の妻なのに?
じゃあ、今目の前にいる彼女は一体?
なんだか夢の中にいるような気がし始め、今日のことを必死に思い出していた。
サークルに顔を出し、カップルの話を盗み聞きながら必死で課題を終わらせた帰り際、大洋の姿を見かけた。