"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる

「本当は誰にも言わないつもりで、これまでも誰にも話したことがないのにどうしてだろう。今日は話したくなっちゃったんだよね」

明るくて優しくて綺麗な彼女の輪郭ははっきりしているのに、どこか脆く、儚い。

ただの大学生で、たまたま隣に越して来ただけの俺に何かができるわけじゃない。平松の一件にしたってそうだった。何もできないことは分かっている。

それに、踏み込んではいけないかどうかだって本能的に感じ取っている。

この拭いきれないもやもやとした違和感は踏み込んではいけないという警告に違いないって。

だけど、今にも消え入りそうな彼女を放っておいてはいけないと相反する気持ちも存在する。

いらないお節介かもしないけれど、手を伸ばさずにはいられなかった。

「もし、今日みたいに話したいことがあるなら俺が聞きます。話聞くだけじゃなくても、できることは全部するんで!!だから、その時は頼ってください」

「……ありがとう」

彼女は少しだけ泣きそうな笑みをした。けれどきっと、電話の時と同じで俺を頼ることはない。

大洋がいるならそれでいい。

でもそうでないなら琴音は一人で抱えてどこかへ行ってしまうような気がしてならない。

「覚えててください」


俺は念を押すように言った。

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