"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
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二人きりで何かしらの店に入るのは、悠介に告白したあの二月の日以来のことだった。

聡い栄太は絵里が言わんとすることを彼女の挙動からある程度、察していた。

話そうとしては他愛もない話題を持ち出していた彼女は漸く話す決心がついたのか、両頬をパチンと叩いて話し出した。

「この前、莉乃ちゃんが……あんたじゃない人と、その、歩いているのを見かけたんだよね」

「歩いてるだけ?ラブホに入って行ったんじゃなくて?」

決心した割には核心をつかない話題に意地悪く言うと、絵里はあんぐりと口を開けた。

「知ってるよ」

もうずっと前から。

去年の秋、文化祭でのことを考えればそれより前からということになる。

絵里は信じられなかった。

あんなに女の子らしく、大人しい莉乃がそんなことをするような子には見えなかったし、栄太から熱烈に愛されていたのを何度もこの目で見てきた身としてはどうしても信じたくはなかった。

そして、あっけらかんとしている目の前の男にも信じ難いと言う気持ちが隠せない。

「じゃあ、やっぱり、前からあんたが言ってたことって莉乃ちゃんのことだったの?」

「……そうなるね〜」

「別れるって選択肢はないの?」


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