"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
「……それは、言えてる」
ふ、と笑う栄太に絵里は眉根を寄せた。
だったらなぜそうしないのか、と言わんばかりの彼女に理解されないだろうことを承知で栄太は言う。
「普通に嫌だろ?好きな女が他の男と一緒にいるだけで吐きそうなのに、寝てるとか無理。だけどさ、会うと好きだなって思っちゃうんだよな〜」
意味もなくカラカラとジュースをかき混ぜた。
運ばれてきた時よりも氷が溶けている。
早く飲まないとジュース本来の味がどんどん薄くなって不味くなる。
だけど、飲む気にはなれなかった。
「まぁ、うん。しんどいよ。いくら好きでももう限界だなとも思う。……別れようとも思ったよ」
「だったら、なんで」
「タイミングが悪いんだ」
「タイミング?」
栄太にとって今別れるのは最悪のタイミングだった。
「俺の中では今も莉乃が一番好きだよ。でも莉乃以外にも気になる子がいてさ」
「じゃあちょうどいいじゃん」
「それがそうでもないんだよ」
目の前ではてなマークを浮かべまくっている絵里に吹き出すように笑い、またカラカラと音を鳴らす。
悠介のように鈍感ではない。
自分のことは自分でよくわかっている。彼はもう、自分が誰に惹かれ始めているかよく知っていた。