"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
そして、自分が恋愛に対して一途な人間であることもよく分かっている。
「その気になる子ってのが彼氏持ちでさ。俺って、意外と恋愛にのめり込んじゃうタイプだから、莉乃と別れたらきっとその子のこと好きになっちゃうと思うんだよね」
別れなければ莉乃が一番。けれど別れて仕舞えば、気持ちは次の人に移行してしまうだろう。
そうなった時、栄太は器用だし我慢もできる自信はあるが、一緒にいれる自信は全くなかった。
気持ちが冷めるまで二人と距離を置かざるを得ないことは目に見えている。
莉乃といるのは心がもう限界だった。
だけど、今は二人と離れる選択を取る方が嫌だった。
「それの方が俺にとっては辛い。それならいっそ、まだ莉乃を好きでいるこの現状の方がマシかなって思った次第です」
それに、莉乃のことが好きなのは本当のことだ。
どれだけ裏切られても会えば惹かれる。
不思議なことに。
心は自分でもコントロールできない。
「それってもう、莉乃ちゃんが防波堤で、本当に好きなのは気になってる人の方なんじゃないの?」
「……莉乃が浮気さえしなければ、他に目が移ることなんてなかったんだよ」
もしも、莉乃の浮気癖さえなければ苦しい気持ちを抱えることはなかった。
天邪鬼なくせに感情がだだ漏れで、揶揄うのが面白くて、一緒にいると楽しい。
それが友達の線を越えようとすることはなかった。
「……千葉崎が今も莉乃ちゃんのことが好きだって言うなら、浮気をやめさせようよ。なんか心当たりないの?」
(心当たり、ねぇ。)