"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる


もうバレているならいいか、と自分の気持ちに気付いた経緯を話した。

「めちゃくちゃ翻弄されてんね〜。なんか、話だけだと大学生を弄ぶ魔性の女にも聞こえる」

「本人は何にも考えてないし、よくて弟、ぶっちゃければ子供にしか見られてないけどな」

「十歳差だとそうなるだろうな〜。俺らからすれば年上はアリだけど、アラサーからしたら年下……それも大学生って厳しいよな。結婚とかしたいだろうし。脈なしなの分かっててあそこに住むって決めたんだ?」

「恋愛云々は置いといても相沢さんが良い人だし、なんていうか一緒にいて楽しかったんだよな。会ったばかりでさよならってのも味気ないし。一回の時よりは全然授業もねーし。とりあえず一年はあそこに住んでみよっかなって」

「まぁ、ゆ〜君が決めたことなら良いと思うけど。相沢さんに彼氏がいないことを祈ってるわ」


顔の前でパンと手を合わせ拝む千葉崎に呆れながら、「だから、ただの隣人でいいんだって」と言えば、千葉崎はニヤッと笑った。


「ゆ〜君。それは理性の話だぞ」


ちょうどミニゲームが終わって俺たちが編成したチームが呼ばれ、そこで話は終わった。
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