"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる

今日はサークルの飲み会もなく、千葉崎も彼女と会う約束をしていたし、大人しく帰宅することにした。

電車の中で酒井からメッセージが来ていたことに気づいた。


『次のサークルでお土産あげる』

旅行中の酒井は今日のサークルには不参加だった。

千葉崎との気持ち悪い恋話中、何故かソワソワと辺りを見渡す千葉崎に誰を探しているのか聞けば酒井だった。

千葉崎とよく小競り合いというか、ジャレ合いはしているが仲はいいとばかり思っていたのに、酒井は千葉崎に旅行へ行っていることは伝えていなかったらしい。

普段の様子を思い浮かべれば、酒井が千葉崎を疎んでいる姿しか思いつかなかった。


酒井は平常運転として、千葉崎だ。


何故、酒井の存在を気にするのか。
彼女一筋ではなかったのか、と疑いの目を向けていれば聡い千葉崎は「それだけは絶対にない」と、きっぱりと否定した。

じゃあ、何なんだと問えば歯切れが悪い。


今日の千葉崎はどこか変だった。


『ありがとな。俺はこの夏旅行に行ってないからお土産ないけど、旅行行った時に絶対買ってくる』


すぐに返事は来て『別にいい』と、あっさりしたものだった。

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