"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる

とても。


文化祭二日目の夜。
千葉崎が俺の家に泊まりにきた。

昨日、文化祭初日の夜は学部でつるんでいる奴らが十人近く泊まりに来たのを考えれば静かなものだ。

どんちゃん騒ぎをして、疲れて寝て、文化祭へ直行。

今日は夜ご飯を食べてテレビを見ながらお菓子を食べるだけだ。


……一応報告しておくか。


ついこの間発覚した事実を打ち明けると千葉崎はゲホゴホとむせて、胸を叩いて苦しみだした。

「はっ、何?今、なんて?」

落ち着いたかと思えば身を乗り出すように聞いてくる。

「だから、結婚してたんだよ」

もう一度、今度は簡潔的な事実を述べると千葉崎はポカンと口を開け、元の位置へ戻った。

「な、なにそれ、そんなことあんの?やべー、なんか、わ、笑えてきた」

アッハッハっと身を捩って笑う千葉崎を放置し、机に広げた菓子を口に放り込む。

前言撤回だ。
こいつ一人で十分うるさい。


「ごめん、あんまりにも信じられない話だったからさ〜」

「…………」

「え?まじなの?」

笑うのを止め、真面目な声音で聞いてくる。
もう言ってやらない。

無言を肯定ととった千葉崎は再度俺に詰め寄ってきた。

「まじかよ………。本当に魔性の女なんじゃ?ゆ〜君、弄ばれたんじゃねーの?普通、旦那がいたら、彼氏はいないけど旦那はいるよって言うだろ?言わなかったってのはおかしい」

「まぁな〜。でも、彼氏がいるかって聞いたらなんでそんな話をするんだろうって感じだったんだよ。その話の時に何か引っかかるってあの人言ってたし、ただ単に忘れてたんだと思うけどな。……それに、全くなんの意識も持たれてなかったし。弄ばれたとは思わない」


「そんな大事なことを忘れるかね〜?まぁ、忘れたとしても、旦那がいる身でノコノコと男子大学生の家に来て一緒に庭いじりって、何か間違いでも起きたら大変なことになるのにな。わかってんのかね〜」

「それは、否定できないな。あの人危機管理が手薄すぎてこっちがびびる」


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