美術室のユーレイ
私は彼の横に移動し、絵を描き始める。
「そういえばそっちからポーズを提案するのって珍しいね」
「うん、今校庭でサッカーをやっているからね」
そう言われて校庭をのぞくと、たしかにサッカーをやっている。
しかもうちのクラスの男子たち。
彼はサッカーボールを目で追っていた。
「そっか。それが見たくてそのポーズか」
「そういうこと」
「あれってうちのクラスの男子たちだよね?叶多くんは一緒にサッカーやらなくていいの?」
「別に?俺は舞空といるほうが好きだから」
平然とそんなことを言う彼。
胸が踊らないわけがない。
「そ、そうなんだ」
あわてて下を向き、スケッチブックを見つめる。
なんでもないように装っていたけど、だんだんと顔が赤くなっていくのを自覚する。
彼が横を向いていてよかった。
「いけいけ!シュート!」
楽しそうにサッカーを見ている。
私は黙々と絵を描く。
この時間がなによりも好きだった。