美術室のユーレイ




私は彼の横に移動し、絵を描き始める。



「そういえばそっちからポーズを提案するのって珍しいね」




「うん、今校庭でサッカーをやっているからね」



そう言われて校庭をのぞくと、たしかにサッカーをやっている。



しかもうちのクラスの男子たち。



彼はサッカーボールを目で追っていた。



「そっか。それが見たくてそのポーズか」



「そういうこと」



「あれってうちのクラスの男子たちだよね?叶多くんは一緒にサッカーやらなくていいの?」



「別に?俺は舞空といるほうが好きだから」



平然とそんなことを言う彼。



胸が踊らないわけがない。



「そ、そうなんだ」



あわてて下を向き、スケッチブックを見つめる。



なんでもないように装っていたけど、だんだんと顔が赤くなっていくのを自覚する。



彼が横を向いていてよかった。



「いけいけ!シュート!」



楽しそうにサッカーを見ている。



私は黙々と絵を描く。



この時間がなによりも好きだった。



< 203 / 267 >

この作品をシェア

pagetop