溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を



 それから、何回か会う内に、輝の方から「付き合わない?」と言われ、風香と輝は付き合い始めた。
 始めはとても幸せな日々で、楽しい話を聞かせてくれたり一緒にゲームもしたりして過ごしていた。けれど、そんな日々は長くは続かなかった。


 「風香、ごめん。俺、他の奴と付き合うことになったからさ。別れるわ」
 「………え………」
 「俺の事好きって告白してきた女がいてさ、それがめちゃくちゃタイプだったんだよ。だから、別れて欲しいんだ。悪いとは思ってるけどさ、いいだろ?」


 悪びれる様子もなく、あっけらかんとそう言う輝を見て、風香は唖然としてしまった。
 何も言わないで黙っている風香を見て、輝はイラッとしたのか、口調が変わった。


 「だって、お前ゲームの情報とか必勝法とか何にも教えてくれないだろ。恋人にぐらい教えろよな」
 「それは私にも守秘義務があって………」
 「そういう所がつまんねーんだよ。俺が好きだったのはお前のイラストで、おまえじゃないんだわ」
 「…………」
 「だから、別れる。それで話しは終わり」
 「………わかった」


 呆れて物が言えないとは、まさしくこう言う状態なのだろうと、風香は感じていた。
 恋人ではなく、ゲームの情報だけ知れればよかったのだ。自分が楽しむだけのために、風香と付き合っていたのだ。
 彼の笑顔はゲームのためだった。
 それが風香にとって大きなダメージとなった。

 風香だけが傷を負い、輝には年下で可愛い彼女が出来た。
 
 風香にとって、誰かに愛される事の心地よさと、別れの時は突然訪れ、それはとても辛い気持ちになるのだと学ばせてくれたのが輝だったのだ。


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