溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を




 「その………実は、私のマンションの前に元彼氏が居て………何だかエントランスとかマンション周辺をウロウロしてたの」
 「元彼氏か……風香ちゃんは、何か心当たりある?彼が訪れる理由」
 「ううん。全くわからないの。彼と付き合っていたのももうずっと昔の事だし。別れてから1度も連絡来たこともないし」
 「んー………じゃあ、元彼氏が風香ちゃんを訪ねてきた理由はわからないか。同じマンションに知り合いがいる、っていうのは偶然にしては出来すぎてるだろうしね」
 「うん……」


 柊はしばらく考え込んだ居たが、その話しはおしまい、とばかりに表情に笑みが残った。


 「話してくれて、ありがとう」
 「………ごめんなさい。勝手に部屋から出てしまって」
 「それは仕方がない事だよ。外に出るなっていうのも行き過ぎてたと思うし。でも………」
 「うぬ……んー!!うーさん!?」


 柊はニヤリと笑うと、突然風香の両頬を指でつまみ出したのだ。頬に少しの痛みと、唇が上手く動けなくて、言葉が変になってしまう。それに、変な顔になっているだろう。


 「いたひ……ひたいおー!」
 「ふふふ……こんな事をされても風香ちゃんは可愛いね」
 「ほぉんなほぉとはいいかあー!」
 「何て言ってるかわからないなー」
 「んーー!!」


 風香の顔や声を聞いて楽しそうに笑う柊。痛さに耐えながら、彼のそんな顔を見るとこんな状態なのにホッとする。
 彼は私と居るときに楽しそうに微笑んでくれる。それがわかる瞬間が安心し、同時に幸せだと感じるのだ。




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