溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を










   ★★★




 隣ですやすやと眠る風香の寝顔を見つめ、柊は思わずニヤついてしまう。
 彼女は自分に寄り添い、抱きついてくる姿が愛らしいと感じられる。
 そんな彼女の額についた前髪を指でよけ、そこに小さくキスを落とした。


 「ん…………」


 すると、風香は何かを感じたのか、口元を緩めた。そんな表情を見ると離れがたくなるが、柊は彼女を起こさないように、ゆっくりとベットから降り寝室から出た。

 真っ暗なリビングに戻り、柊は持っていたスマホを操作した。
 そして、部下である和臣に電話をした。
 すると、和臣はすぐに電話に出た。


 『お疲れ様です』
 「夜遅くに悪い。今、いいか?」
 『はい。大丈夫です』
 「島崎輝が動いた。気になるので一応調べておいてくれないか」
 『わかりました。それで、風香さんは大丈夫そうですか?』
 「あぁ……落ち着いてる」
 『そうですか。で、見つかりそうですか?』
 「…………まぁ、もう少しで出てくるはずだ。焦るなよ」
 『了解しました。では、島崎についてわかったら電話します』
 「頼んだ」


 そう言うと、柊はすぐに通話ボタンを切った。ふーっと大きな息を吐いてソファにドサッと座り込んだ。



 「………そろそろ茶番はおしまいにしよう。そうだろ?風香ちゃん……」



 柊はそう呟くと、天井を見上げたまま目を瞑った。
 やることは山積みだ。
 だが、先を越されるわけにはいかないのだ。


 「風香ちゃん………ごめんね………」


 頭を過るの彼女の泣いた顔だ。
 そんな表情など、もう見たくもない。
 けれど、きっと彼女は泣いてしまうだろう。

 それを想像するだけで心苦しくなってしまう。だが、柊はそれを止める事は絶対に出来ないのだ。


 ギリッと爪の跡が掌に残るぐらい強く強く手を握りしめる。

 どんな事をしてでもやると決めたのだ。
 それで風香が悲しむとしても。


 それが2人の正義なのだから。




 

 
< 104 / 209 >

この作品をシェア

pagetop