溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
「お待たせ致しました。」
黒い髪をきっちりと整えたバーテンダーが風香の元にやってきた。
「こちらは、青い珊瑚礁というカクテルです。お客様は海がお好きなようでしたので、緑色の珊瑚をイメージしたカクテルをご用意しました」
そう言って、風香の目の前に置かれたのは、鮮やかなな緑色の中にチェリーが入っている可愛らしいカクテルだった。
それを見て、思わず風香も感激の声をもらした。
「綺麗ですね………」
「ありがとうございます。こちらはペパーミントとジンの爽やかさが特徴ですがやや甘口のカクテルです。アルコール度は高めになっております」
「ありがとうございます」
バーテンダーはにこやかに微笑むとその場から去っていく。グラスを持ち上げて、その色味の美しさを十分に目で楽しんだ後、風香は一口そのカクテルを飲み込んだ。すると、夏のように爽やかな飲み口と、後からくる濃厚な甘さ、そしてお酒の強さを感じる。
普段ならば強めのお酒は飲まない。けれど、少し酔っていた方が夢を見ずにぐっすりと眠れるだろうと思ったのだ。
ゆったりとした夜の時間をカクテルと海岸の景色という贅沢な雰囲気を楽しみながら過ごす。青の珊瑚礁というカクテルを気に入った風香は、それから同じものを2つほど頼んでしまい、完全に酔っぱらってしまった。
「さすがに飲み過ぎたかな………」と心の中で呟き、残っていたカクテルを飲み干す。顔だけではなく、全身が熱くなり、ふわふわした感覚に襲われる。けれど、気持ちが悪いわけではなく、とても心地のよい気持ちだった。