溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を



 「君を守りたいっていう気持ちも大きいのは確かだよ。あんな事があったんだ、一緒に居れば風香ちゃんを守れるかなって。けど、一番はずっと一緒に居れたら幸せだなって俺は思えて。………もちろん、落ち着いたら君に伝えたい思いもある。急かもしれないけど………俺との同棲、考えてみて欲しい」


 柊はそう言うと、風香の手に優しく触れ、握りしめた。彼の手がとても熱い。緊張しているのだろうとわかる。
 結婚してから一緒に住む予定だったこの部屋。それが今叶いそうになっている。
 彼を「いってらっしゃい」と見送り、夕飯を作って待っていて、「おかえりなさい」と灯りのついた部屋で出迎える。一番始めに「おはよう」と挨拶して、「おやすみ」と1日の最後に彼を見て眠る。それがどんなに幸せな事か。風香は想像してはずっと楽しみにしていた事だった。

 片方の手の中にあるキーケースを、風香をもう1度見つめる。
 彼の部屋の鍵はこれで2つ目だ。
 けれど、今貰った鍵は、これからも柊に会うために使えるものだ。
 柊の傍に居たい。
 もう離れたくない。
 また記憶をなくしてしまうのなんて、嫌だ。

 そんな気持ちが溢れてきた。


 「私もずっと一緒に居たい……」
 「風香ちゃん。それって」
 「………同棲したい、です」


 すぐに返事を貰えると思っていなかったのだろう。柊はとても驚いた顔をしていた。
 そんな彼を微笑みながら見ていた風香は、柊に抱きついて「くっついていたいから」と、甘えるように気持ちを伝えた。





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