溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を




 引っ越しの準備が進み、少しずつ柊と荷物を運び出していき、風香の部屋に物が少なくなってきた。けれど、その頃から柊の仕事が忙しくなった。
 そのため、最後の荷物である仕事の資料などは風香の部屋に置いたままになっていた。


 そして、柊の家の空き部屋が風香の部屋になった。それは婚約した時もそう決めていたので、ようやくこの部屋で過ごせるようになった、という気分だった。部屋には仕事用の机や本棚が置かれていた。ベットもあったけれど、きっとここで寝る事はないだろう。これは、将来つかうために取っておこうと思っていたものだ。

 そのため、風香はほとんど柊の家で過ごし、資料で見たいものがある時のみ風香の家に戻るようになっていた。そして、日に日に多忙になる柊は、帰ってくるのも夜中でなり、朝も早くに出ていってしまうようになっていた。会えない寂しさもあるけれど、風香は柊の体が心配だった。


 そんな時に柊の後輩である和臣から電話がかかってきた。柊の話をまた聞きたいとの事で呼び出しがあったのだ。だが、彼は警察署を忙しく動き回っているようだったので、外で会う事になった。
 指定された場所は、以前も柊と訪れた会員制のカフェだった。


 「すみません。こんな怪しい場所を指定してしまって」
 「人目につきたくない時はここが良いって柊も言ってますよ。だから、気にしないで下さい」


 個室の部屋に和臣のコーヒーと風香のココアが届いた。一口飲んだ後に和臣が話を切り出した。



< 123 / 209 >

この作品をシェア

pagetop