溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
3話「再会?」
3話「再会?」
男は柊に本当によく似ていた。
近くで見ても、見間違いではない。人違いでもない。そう思えるほどに似ていた。
「………あの、私は………」
「ごめん。もしかして、会ったことがありますか?俺の名前も柊って言うですけど…………。人違いだったら、すごい偶然ですね」
風香は何と伝えればいいのか言葉を濁していると、男はそう言って申し訳なさそうな表情を見せた。
「………いえ。すみません。突然声を掛けてしまって」
「いや。大丈夫です。あ、エレベーター来ましたね」
そう言って、柊と名乗った男はエレベーターのボタンを押して風香を先に乗せてくれた。「何階ですか?」と聞かれ、自分の部屋の階を伝えると、それと一緒に自分の泊まる部屋の階のボタンも押してくれる。
「そんなに似てました?」
「え、えぇ………とても。驚いてバーを飛び出てしまうぐらいに」
「そうですか。会ってみたいですね、その人に」
そう言って、優しく微笑んでくれる男は、やはり柊にしか見えない。酔っているから見間違いを起こしたわけではないはずだ。
詳しく話を聞きたい。そう思って、風香は顔を上げ、口を開いた。
ポーンッ
優しい機械音がエレベーター内に響く。
男が降りる階に到着したのだ。
「では………。おやすみなさい」
そう言って、スーツを着た彼は部屋から降りてしまう。ここで別れたらもう会えないかもしれない。そう思ったら風香の足は動いていた。