溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
「なんで、こんなものが………」
風香は不思議に思いつつ、手に取り中身を確認した。
すると、そこには予想もしなかった物が入っていた。
「これは………私が書いた手紙………?」
その缶箱には、風香が今まで手書きで書いたメッセージや手紙が入っていた。誕生日プレゼントに同封していたもの、記念日の手紙、彼の部屋で料理をし、作りおきしたもののタッパーに貼ってあったメモ書き。そんな些細なものまで残してあったのだ。
そう。風香と同じように…………。
「柊………こんなものまで大切にしてくれてたの………嬉しい………」
もし風香の事を本当に忘れようとしているのなら、荷物など捨ててしまえばいい。
手紙だって残しておく必要などないのだ。
そう思った瞬間、風香は瞳から一筋の涙がこぼれた。
柊の気持ちが伝わってきたのかもしれない。
記憶を失う前の彼も、きっと自分の事を考えていてくれた。そんな風に思えた。
それが風香にとって、微かな希望となった。