溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
29話「正体」





   29話「正体」




 「急にお願いしてごめんね」
 「いいのいいの。時間あったし、風香に食事に誘おうと思ってたところだったから」


 風香はずぐに美鈴に連絡をして、彼女と合流した。美鈴は急な頼みだったが、しばらく家に泊めてくれる事をすぐに承諾してくれた。


 「柊さんが泊まり込みで仕事で一人になるのは怖いでしょ?あんな事があった後だし。………あれからは輝は来てないの?」
 「うん。なるべく柊の家に居るようにしたから。引っ越しもそろそろ終わるし」
 「同棲の方が安心だもんね。私もその方がいいと思うよ」


 なるべく人混みを歩いた方がいいと、夜の街を美鈴と歩いていた。平日の夜でも人は多い。こんな雑踏が今はとても安心出来る環境だなんて不思議だな、と風香は思った。
 夕飯を食べた後に、美鈴の提案で少しだけ飲みに行く事にした。知り合いがやっているバーだというので、そちらに向かっていた。


 「それで、柊さんはどう?記憶の方は少し改善してるの?」
 「ううん。まだ全然………。メモリーロスもなかったし」
 「そうなんだ。やっぱり内緒で病院とか会社とかで飲んでるのかな。………今度尾行でもしてみる?」
 「美鈴………柊は警察官だよ。警察官を尾行うしてもすぐにバレると思うけど?」
 「あぁ!そういえばそうだよね」



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