溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
33話「安らぎと真実」





   33話「安らぎと真実」




 柊は約束したことを守ってくれた。
 いつも以上にお姫様のような扱いをしてくれ、そして体を心配してくれた。
 お風呂から上がった後でも、風香は食欲がなく、そのまま寝る事になった。
 風香が先にベットに入り、風呂に行った柊を待っていた。先に寝てしまうかもしれないと思ったけれど、頭が冴えてしまっているのか、すぐに寝付く事はなかった。


 「起きて待っててくれたの?」
 

 いつもより早く帰ってきた柊は、まだほんのり髪が濡れていた。風香を心配して、急いで上がってきてくれたのだろう。そんな彼を笑顔で出迎え「お布団を温めながら待っていました」と、言うと柊は笑ってくれた。


 「さて、今日は俺も早く寝ようかな」
 「お腹すいてるでしょ?食べてきてもよかったのに」
 「いいさ。俺も少し興奮してるみたいで、何だか食欲がないんだ。それなら頭を休めたい」
 「わかった。一緒に寝よう」
 

 風香はそう言うと彼にすり寄り、柊の胸に体を埋めた。すると、嬉しそうに笑う柊の声が頭の上から響いてくる。
 最近の日々は緊迫していたけれど、彼との日々は穏やかだった。けれど、その時以上に安らぎを感じられるのだ。それが、柊の言う「終わった」という事なのだろう。



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