溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を



 「話すのが遅くなって、ごめん………」
 「ねぇ………嘘って言ってよ………柊………どうして………どうしてなの?」


 堪え切れなくなった風香は、柊の胸に飛び込み、そしてくじゃくじゃとした混乱する気持ちを表すように、柊の胸をドンドンっと叩いた。
 それを柊は何も言わずに受け入れる。
 すると、風香の叩いていた手が震え始めた。そして、大粒の涙を流しながら柊の胸に顔を寄せて、声を上げて泣いた。



 何度も何度も大切な友人の名前を呼んでいた。


 「風香………俺は風香の友達だからと言って、見逃したり出来ない。大切な人だからこそ、話を聞いて正しい道を伝えていかなきゃいけないと思ってる」
 「…………うん………わかってる……わかってるけど………どうして、そんな………。私には何も話してくれなかった。………相談もしてくれなかったんだろう………」
 「それもきっと理由があるはずだ」




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