溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を




  ☆★☆




 輝と出会ったのはとあるカフェだった。
 風香はとあるゲームのキャラクターデザインをする事になり、苦戦しながらラフ画を描いていた。そのゲームの実況動画を見ながら世界観を勉強している時に、輝に声をかけられたのだ。

 「お姉さん、そのゲーム好きなの?」
 「………え………」
 「カフェで難しい顔しながらゲームの実況動画見て、絵を描いてるなんて珍しかったから。俺、そのゲーム好きなんだよね」
 「あ……そうなんですね」


 絵を描く事が趣味だった風香は、人付き合いもほとんどなく、声を掛けられたとしてもいつも戸惑ってしまうばかりだった。
 そんなよそよそしい風香だったけれど、輝は勝手に座り、風香の絵を眺めていた。


 「すごいなー………お姉さん、プロみたいに上手じゃん」
 「………あ、ありがとう」


 こんなにも素直に褒められることなどなかった風香は、思わず嬉しくなってしまう。見ず知らずの相手に、こうやって褒めてもらって素直に喜んでしまう自分もダメだと思いつつも、やはり嬉しいものは嬉しかった。


 「え、もしかしてプロなの?」
 「えっと………このゲームの事は言えないけど、いろいろイラストは描いてます」
 「マジで!?すごいなー。ゲーム大好きだからさ、俺の知ってるゲームあるかな?イラスト見せてよ」
 「あ、はい…………」


 スマホに残っていた画像を見せると輝は「あ、これ知ってるわ!」「このゲームやってた!この背景覚えてる」など、興奮した様子で沢山の絵を見たくれたのだ。
 風香も自分が担当したゲームは一通りはやってみる事にしていたので、輝とも話が合い、気づくと数時間話し込んでしまっていた。




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