那須大八郎~椎葉の『鶴富姫伝説』~
盗賊の襲撃の翌朝も美砂と大八郎はいつもと同じように淡々としていた。
前日の夜には着くはずだった宿場町に着いたのは朝早くだ。水流の一行はそこで必要なものだけを極力少なめに買い入れた。
その時に万屋の老婆が大八郎に声をかけた。
「私は昔、京にいて後白河法皇様のところにも色々と物を届けていたんだけどね。そこで義経様に会ったことがあるんじゃ。あんたは義経様に瓜二つだよ。」
この時、水流は身のこなしのきびきびとした若い男を年寄りが褒めてる程度にしか思わなかった。
やがて水流たちは鎌倉へと戻ってきた。この時も大八郎は二度ほど同じ事を言われた。
「あんたは義経様にそっくりだねぇ。」
「まるで九郎殿の生まれ変わりみたいだよ。」
とである。
水流は軽い気持ちで美砂に尋ねた。
「美砂が大八郎を可愛がるのは義経様に似ているからかい。」
美砂は表情を変えることなく答えた。
「似ていると言えば似ていますが、どちらかと言えば母親似でしょうか。義経様は一重瞼でしたが大八郎は二重瞼です。」
美砂はため息をついた。水流は美砂に向かって、
「年齢からすれば義経様の御子でもおかしくないな。」
と言うと美砂はただ、
「そうですか。」
と呟いた。
前日の夜には着くはずだった宿場町に着いたのは朝早くだ。水流の一行はそこで必要なものだけを極力少なめに買い入れた。
その時に万屋の老婆が大八郎に声をかけた。
「私は昔、京にいて後白河法皇様のところにも色々と物を届けていたんだけどね。そこで義経様に会ったことがあるんじゃ。あんたは義経様に瓜二つだよ。」
この時、水流は身のこなしのきびきびとした若い男を年寄りが褒めてる程度にしか思わなかった。
やがて水流たちは鎌倉へと戻ってきた。この時も大八郎は二度ほど同じ事を言われた。
「あんたは義経様にそっくりだねぇ。」
「まるで九郎殿の生まれ変わりみたいだよ。」
とである。
水流は軽い気持ちで美砂に尋ねた。
「美砂が大八郎を可愛がるのは義経様に似ているからかい。」
美砂は表情を変えることなく答えた。
「似ていると言えば似ていますが、どちらかと言えば母親似でしょうか。義経様は一重瞼でしたが大八郎は二重瞼です。」
美砂はため息をついた。水流は美砂に向かって、
「年齢からすれば義経様の御子でもおかしくないな。」
と言うと美砂はただ、
「そうですか。」
と呟いた。