那須大八郎~椎葉の『鶴富姫伝説』~
大八郎は近くの漁村に預けられた。政子は根回し良くこの漁村に乳母の手配をしていた。乳離れまで大八郎はこの漁村で暮らし、その後は風間谷へと行き飛鳶や美砂と北条家の草の者としての修行する。
政子は村人に〈大八郞は下野の須藤氏の十八男〉だと伝えた。ついでに須藤氏はあの藤原北家藤原道長の末裔だと伝えておけば、表では[立派な血筋だ]と言われ、裏では[遊び人道長の血筋だから]と納得する者も多い。
大八郎を村人に預けた夜、政子が美砂に言った。
「本当にいい名前を付けてくれた。それにしても偶然とは恐ろしい。九は八より大きい数ではあるが、まず九郎に結び付ける者はいない。皆、那須資隆の十八男でごくごく当たり前に聞こえる。」
「お役に立てて何よりです。」
美砂はそう答えた。すると政子は
「今度、下野国に行くぞ。資隆殿はすでに亡くなっているが、与一には〈どうやら弟がいるようだ。〉と伝えておかねばな。そしてこのことはそなたと飛鳶と私の心の中だけに留めておかねばならぬ。後は資隆殿の墓前で〈勝手にお名前をお借りして申し訳ない。〉と伝えておかねばならんな。」
と美砂に言った。
政子は村人に〈大八郞は下野の須藤氏の十八男〉だと伝えた。ついでに須藤氏はあの藤原北家藤原道長の末裔だと伝えておけば、表では[立派な血筋だ]と言われ、裏では[遊び人道長の血筋だから]と納得する者も多い。
大八郎を村人に預けた夜、政子が美砂に言った。
「本当にいい名前を付けてくれた。それにしても偶然とは恐ろしい。九は八より大きい数ではあるが、まず九郎に結び付ける者はいない。皆、那須資隆の十八男でごくごく当たり前に聞こえる。」
「お役に立てて何よりです。」
美砂はそう答えた。すると政子は
「今度、下野国に行くぞ。資隆殿はすでに亡くなっているが、与一には〈どうやら弟がいるようだ。〉と伝えておかねばな。そしてこのことはそなたと飛鳶と私の心の中だけに留めておかねばならぬ。後は資隆殿の墓前で〈勝手にお名前をお借りして申し訳ない。〉と伝えておかねばならんな。」
と美砂に言った。