東京血風録3 キラーズ・コード【改編版】

怒涛

さすがは御業の結界、と言うべきか。
相手の動きを封じ、こちらのパワーを増幅させる。これほど、理にかなった結界はあっただろうか。
現に、鬼の王たる摂津秋房にダメージを与えた所である。

王道遥はじめ、全員が漲る力を感じていた。このまま行ける。そう感じずにはいれなかった。

ただ、それぞれが疑問に満ちているのも事実だった。

柊一は文献にて御業の結界について予習していた。効果についてもある程度は予想していた。
しかし、結界を作動させない様に、何者かが岩に細工をしていた。何の為に。
結界を使わせない、或いは結界を使ってほしくない、そういう意図が見え隠れする。何故に?謎が残る。

真琴は霧華に驚いていた。
あれだけ、瀕死の状態から長野の彼の地までやってきたのだ。
傀儡師とか言う怪しい輩の術だとしても、それを依頼したのは霧華自身らしい。
それと、御業の結界の岩、異常がある事を理解していたのだ。それを直しにやってきた。何故?謎である。

飛鳥は大鉄と無良と戦わずに済んだ事に安堵した。鬼児とやらに、複製の技術がある事にも驚いた。
途中までそばにいた、遥のおばあちゃんとお付きの者が居なくなっていた事を心配していた。何処へ行ったのだ。
霧華さんの事もあり、遥が心配だった。
身内がいて、そのいずれも心配の種である。心情が心配だ。

遥は疲弊していた。心が。
何がどうなっているのか、目まぐるしい転回に擦り減っていた。
姉霧華の事。身体の安否。
姉を連れて行った傀儡師の男の事。
祖母上遠野林田タカの事。
御業の結界の事。
そして、摂津秋房との因縁とは。
思わず、口を衝いて出た。
「因縁て何だよ?」

飛鳥に叩きつけられて、地面に伏したままの摂津は顔を上げた。表情は見えない。腕を失ったので踠いていたが、ズボッと右腕が生えると、体を起こした。
顔には、悔しさと笑みを合わせた様な面が広がっていた。
「前に…此処で…貴様の…祖先に…負けたのだ………!」

遥は摂津の意外な一面を垣間見た様な気がした。
敗北した事を、記憶にとどめ、それを子孫である遥とで決着をつけようと言うのだ。
そんな事の為だけに、わざわざ此処まで呼び出したのだろうか?
以前、御業の結界の効力により無力化され敗北したのであろうに、御業の結界にて勝負をしようとする潔さ。
真面目と言うか、愚直と言うか。

摂津は胡座をかいた。
その時には、左腕が生えていた。
「つまらぬ事だ。あれはお前の祖父になるのか。あの男」
真顔で言った。





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