東京血風録3 キラーズ・コード【改編版】
結界を出た。
ずんと体が重くなった気がする。
伊號丸の言われ通り、木刀・伊號丸を突き出すとレイピア・貫丸が重なり交わった。
以後、伊號丸と貫丸の会話なのだが、木刀を握っている遥には筒抜けだった。
【伊號、何やってんだよー】
【うむ、この遥殿と共におるよ】
【いや、そんなんじゃなくてさ。さっさと身体奪って立ち回らんのかい?って事さ!昔みたいにさ、一緒にやろうぜ】
【うむむ、それはだな……ゴニョ】

歯切れが悪い。こんなやり取りを聞かされて、気が気じゃない。
それよりも、伊號丸も昔は実体化してい
た事に驚いた。
何故、僕は奪わなかったのかな?精神。
奪われたら、僕の精神はどうなるんだろう?
僕の意思も剣鬼の彼らに読まれちゃう事を危惧しながらも、思考が止まらない。
【そう。今はよいのじゃよ】
【そうなんだね。なんか丸くなったんじゃない?伊號。
それよかさ、ちょっと悪い噂があってさ。
驚かないでくれ。
斜骸(しゃがら)が実体化してるんだ】
しゃがら?剣鬼ならしゃがら丸?
その単語が出た瞬間、伊號丸の感情が跳ね上がったのを感じた。
【何ゆえに?】
【そんなのオイラが解る訳ないじゃん。
オイラ伊號達より百年以上若いんだから。てか、喧嘩はよしとくれよ。あんた達の闘いには巻き込まれたくないね】
【…………】
伊號丸は何も言わなかった。
意思は伝わった。
貫丸から木刀を離した。

「オイラはもう行くぜ。妙な気を感じて此処まで来た。こんな偶然もあるんだな。また会えたら嬉しいよ。じゃ」
実体化した貫丸は、踵を返した。
伊號丸にまた喉を使われる、と覚悟していたのだが、伊號丸は何も言わなかった。木刀からも何の意思も感じられなかった。

この奇妙なやり取りを、誰にも見られなかったのは幸いか。
振り向くと、結界の側におタカと源さんが立っていた。








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