16歳、きみと一生に一度の恋をする。
その後、お母さんは諦めたように離婚届けに判を押して、ふたりは別れた。
両親の喧嘩が絶えなかったあの頃のことを思い出すたびに胸が詰まる。
子供ながらに離婚して家族がバラバラになるということがどれだけ大きなことなのか理解していた。
変わってしまった名字も、父親がいないということも、なんとなく受け入れていくしかなかった。
大人の事情は今もよくわからない。
あの時、『仲直りして』と私が強く間に入れば修復できたのかどうかも、わからない。
もうなにを言ったって過去のことだし、また三人で暮らしたいという気持ちはない。
でも、身勝手だった父に対しての、やるせない気持ちだけは消えない。
私は真っ白な便箋を手に取り、書きなぐるようにして【裏切り者】と書いた。
その手紙はポストに投函することなく、丸めてゴミ箱に捨てた。