16歳、きみと一生に一度の恋をする。
「藤枝くんって、やっぱりカッコいいよね!」
犯人疑惑があった時には白い目で見てたくせに、簡単に態度を変える。
調子がいいやつらだなと、苛立ちながら歩いていると、誰かからグイッと制服を掴まれた。
「あ?」
乱暴に振り向くと、そこには汐里が立っていた。
「え、ど、どうした?」
さっきまでの苛立ちはどこへやら。汐里から小さく制服を掴まれているだけで、鼓動はいつもより速くなる。
「柱にぶつかるところだったから」
彼女がぽつりと呟く。たしかに目の前には廊下から露出している柱があった。
周りに気を取られていたとはいえ、全然気づかなかった。
また少し眼球が揺れている。他はどうでもいいけど、汐里の顔ぐらいはぼやけずに見たいのに。
「それだけ。じゃあね」
自分のクラスに向かおうとする汐里の手を俺はとっさに掴んだ。
引き寄せてはいけないとわかっていても止められない。
「今日も昼休み、部室棟に来るだろ? っていうか来て」
半ば強引に誘うと、汐里は小さく頷いた。