転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「事情はわかりました。まさかエリオット様が、そんな理由であなたを婚約者にし、身勝手に破棄をしたとは」
「私自身も、意味がわからなかったわ。破棄後すぐに私に能力が宿ったことだけは、エリオットの大きな誤算だったと思うけど」
「じゃあ、シエラ様はもしかして、その力でフィデル様の居場所を突き止めた、ということですか?」
「ご名答! しっかりと見させていただきました! この目でね」
「確かにシエラ様とフィデル様なら、お互いに協力し合え、分かち合えるかもしれません。フィデル様は、能力を持っている自分を嫌っていました。同じ能力者のあなたなら、きっとフィデル様の心に寄り添える……」

 ……ん? なんだかニールがひとりで勝手に盛り上がり始めたような。

「シエラ様! フィデル様を変えてあげてください!」
「えっ!? 変えるって?」
「私は何年もフィデル様の執事をやりながら、なにもできない自分が歯がゆくて仕方ありませんでした。私以外の人間と話すこともなく、ずっとひとりぼっちで過ごすフィデル様を……かわいそうだと思っていながら。手を差し伸べることができなかったのです」
「ニール……」
「どうしてフィデル様だけあんな目に遭わせられるのか……王妃様殺しの証拠もないのに。陛下はすっかり塞ぎ込んでしまい、今ではエリオット様の言いなり状態。エリオット様への不信感は募っていく一方でしたが、シエラ様の話を聞いて、私はもうエリオット様を信じるこはできません」

 今まで誰にも言えなかった気持ちを、ニールはやっと誰かに吐き出すことができたみたいだ。ニールもずっと、ひとりでフィデル様のことを悩み、抱え込んでいたのかと思うと、心が痛くなった。

「私はシエラ様を信じます。だから、あなたに協力します。でもそのかわり約束してください。フィデル様の笑顔を、もう一度私に見せてくれることを」

 何年もニールはフィデル様の笑顔を見ていないことが伺える。もう一度、ということは、昔は笑っていたのだろう。私は一度もフィデル様の笑顔を見たことがないので、私としてもその約束は積極的に守りにいきたいところだ。だって興味あるもの。あんなイケメンが笑うところ。

「もちろん。約束するわ」

 私の返事を聞いて、ニールの表情がぱあっと明るくなった。
 そしてすぐに私の手を引いて、ドリスさんの部屋から飛び出す。

「ちょっ! ニール! 走るの早いってば!」
「善は急げと言うでしょう! ちょうど夕食をフィデル様のところへ持っていく時間なんです! このタイミングで行ってしまいましょう!」

 私はそのまま目が回りそうになりながら、ニールと共に別邸へと走った。

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