転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~

「……私が持つ、異能?」

 〝千里眼〟。その言葉を聞いて、私はすっかり忘れていた、幼い頃に母から聞いた話を思い出した。

 古くから続く自分たちの先祖には、不思議な能力を持つものがいたという話を。その能力者が生まれるのは五十年から百年に一度の割合だということも。……ただの作り話と思って聞き流していたけど。

「君は前回の能力者が生まれてからちょうど百年後に生まれた子供。……異能を持つ可能性がある、最大候補者だったんだ。でも結婚間近になっても、君に能力がある確信は持てなかった」

 当たり前だ。私にそんな能力はないのだから。……ということは、まさか。

「エリオット様は、最初から私の能力だけが目当てで、私に婚約を申し込んだのですか?」

 だったらすべて辻褄が合う。綺麗で権力を持つ女性に囲まれるなかで、エリオット様が私のような貧乏娘をわざわざ選んだことだって。

「ああ。〝千里眼〟の能力を自分のものにできれば、国をもっと大きくできると思ったんだが……。残念な結果になってしまったよ。君にその能力がないのなら、わざわざ愛していない君と結婚する意味がない」
「……愛して、いない?」

 全部、嘘だったというの。私はあなたの隣を歩いても恥ずかしくないよう、一生懸命努力してきた。そんな私を、あなたは優しく見守ってくれて、愛の言葉を囁いてくれたというのに。
 前世で自分と共に落ちて消えてしまった〝好き〟という感情を、ここへ来てやっと思い出すことができたばかりなのに、この仕打ちはあんまりじゃないか。

「僕には心から愛した人がいるんだ。ロレッタ――僕は彼女と結婚することに決めた。もう、自分の本当の気持ちに嘘をつかずにすむよ」
「うれしい……エリオット様。やっと堂々と、こうしていられるのですね」
「ああ。今まで寂しい気持ちをさせてすまなかった。今日からは君が僕の婚約者だ」

 追い打ちをかけるように、大好きだった人と大嫌いだった人がいちゃいちゃする光景を見せられ、私の心は前世で婚約破棄されたときよりもズタズタになった。

 ――しかも今なんて言った? 今まで? まさかこのふたり、隠れて前から付き合ってたの?

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