転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「でも、フラれた直後に能力が目覚めるなんて、最高におもしろい展開ね。そんなことも知らないで、エリオットは夜会でシエラを陥れようとしてるなんて……。ああ、今日の夜会が楽しみで仕方なくなってきたわ!」
「もう、ドリスさん! 他人事だと思って楽しんでません? 私は必死なんですから!」
「楽しんでるに決まってるじゃない。楽しませてもらうかわりに、あたしができることはしてあげるわよ。そのために呼んだんでしょう?」

 足を組み、身を乗り出して頬杖をつくドリスさんは、やっぱりこの状況を楽しんでいる。王妃教育のときはいつも恐い顔をしていたのに、今は笑顔のほうが多い。逆に不気味に感じるが、それは言わないでおこう。

「ドリスさんに、夜会用に着るわたしたちの衣装をこっそり持ってきてほしくて……。エリオットのクローゼットから」
「……そんなことでいいわけ?」

 拍子抜けした様子のドリスさんに、〝千里眼〟で見た衣装の特徴を伝えると、後でニールに渡しておくと約束してくれた。
「で、夜会にふたりで忍びこんで、具体的になにをするつもりなのよ?」
「とりあえずは、ふたりの裏側を全部暴いてやろうかなって。あと、フィデルのお披露目を盛大に!」
「やめろ」

 私の提案は、フィデルによってすぐさま却下されてしまった。

「シエラ。あんたもしかして、ふたり一緒に夜会に突撃して暴れ回ろうとか適当なこと考えてるんじゃないでしょうね」
「へっ!? えっと、その……」

 上機嫌だったドリスさんの声が、ワントーン低くなった。私の安易な考えは、一瞬でドリスさんに見透かされたみたいだ。

「図星、みたいね。それじゃ全然おもしろくないわ」
「す、すみません。でも時間もないし、他に思いつかなくて」
「……じゃあ、あたしのシナリオ通りに動いてみない?」

 私とフィデルの頭上に、ハテナマークが浮かぶ。

「せっかく第二王子フィデルが十年ぶりに人前に出るんだもの。最高にかっこよく登場してもらわないと」

 ドリスさんは足を組みなおすと、不適な笑みを浮かべてそう言った。
 
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