転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
『それがいい。国の発展のためを想うとシエラの力は必要と考え、僕は自分の気持ちを殺して婚約を交わした、というシナリオだな』
『うふふ。さすがエリオット様。とってもいいシナリオだわ』
『今度の夜会で大々的にこのことをみんなに言おう。あの女は大嘘つき女だと。そうしたら、僕もただの被害者になり、理不尽な婚約破棄をしたとは思われないだろう』

 下品に笑い合うふたり。あまりの怒りで瞬きをした瞬間、見えていた映像は切れるように視界から消えた。
 今見たものが、私の妄想だったとは思えない。あれは間違いなく、現在進行形の、リアルなものだった。

「今のって、もしかして……」

 私は気づく。〝見えないはずのものが見えた〟という今起きた不思議な出来事がなにを意味しているのかを。

「これが、私が持っている〝千里眼〟の能力?」

 神様は言っていた、『あなたを、特別な女の子にしてあげよう』と。
 あれは、王子様と結婚する幸せな女の子じゃなくて――特別な力を持つ女の子ってことだったんだ。

 能力がないことが原因で、こっぴどくフラれたこんなタイミングで自分の能力が開花するなんて……いったい誰が予想できただろうか。
 でも、これでよかった。ちょっとでも早く才能が開花していれば、私は一生あの男に騙されたまま、いいように使われていたことだろう。

 エリオット様は完璧な男だと思っていた。でもそんなことなかった。彼は見抜けなかったのだから。私の才能が、遅咲きであることを。いつか開花するかもなんて可能性を信じて待つことに痺れを切らし、性悪女と一刻も早く公然の前でいちゃつきたいだけのマヌケな王子だったのだ。

「……みてなさい。ふたりとも」

 前世では婚約破棄されて命を落としてしまったけど、この世界ではそんな馬鹿なことはしない。私は自分に与えられた〝能力〟で、私を笑いものにし侮辱したふたりに絶対復讐してやる。

 〝大嘘つき女〟になんて、絶対になってやらないんだから。

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