転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
 ニールが言っていたように、顔や声の弾み方で、エリオットの機嫌がいいことはすぐわかった。相手にしている暇はないので、すっと横を通り抜けようとすると、エリオットに腕を掴まれる。

「ツレないなぁ。シエラ。ちょっとくらい、僕との会話を楽しんでくれてもいいんじゃないか? 昔のように」

 エリオットに耳元で囁かれ、私の嫌悪感は増していく。今更なにを言っているんだ。この男と楽しさを共有することなんて、一生ないに決まっているというのに。

「嫌ですわ。エリオット様。シエラとの距離が近すぎます」
「すまないロレッタ。でも、嫉妬した君もとても愛らしいね」
「まぁエリオット様……。まさか、私を嫉妬させるためにわざと? 意地悪なお方……」

 目の前で寄り添うふたり。この光景も、正直もう見飽きた。前まではイラッとしていたが、今はもう無感情になってきている。フィデルなんて他所を向いて、視界にすら入れていない。

「なんだかふたり、今日はいつも以上にうざ――じゃなくて、機嫌がよさそうね。なにかいいことでもあったの?」

 硬くなった表情筋をなんとか動かし、ぎこちなく口角を上げてふたりに聞いてみる。

「さすがシエラ。目ざといな。いいことはあったんじゃなくて、これからあるのさ」
「うふふ。ま、あなたたちには関係ないことよ。行きましょ、エリオット様」

 ふたりは笑い声を上げながら、最初から最後まで鬱陶しいまま私たちの前から去って行った。
 
 ドリスさんの部屋に着きノックをすると、ドリスさんが部屋へと招き入れてくれた。
 部屋に入るなり、ロレッタの王妃教育についての愚痴を散々聞かされた後、私はドリスさんにふたりのことについてさぐりを入れる。

「あのふたり、身近で事件が起きるかもっていうのに随分楽しそうでしたけど、なにかあったんですか?」
「さあ? ああでも、明日、学園でこの春から入学予定の新入生の前で、卒業生代表としてエリオットとロレッタが演説をするって聞いたわ」
「演説!? あのふたりが?」
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