人格矯正メロディ
コトハの頬は赤くなっていたから、きっと誰かから殴られたのだろう。


すると、2人の生徒がおずおずと手を上げた。


コトハをトイレに閉じ込めた時、手伝ってくれた子たちだ。


あたしはコトハの腹部から足をどかし、2人組へ向けて声をかけた。


「コトハのこと好きにしていいよ」


そう言うと、2人の表情がパッと輝いた。


代わりにコトハの顔色は悪くなり、あたしに助けを求めるような視線を送って来る。


あたしはそんなコトハに背を向けた。


最初にあたしの手を振りはらったのはコトハの方だ。


あたしはもう、コトハに手を差し伸べることはないだろう。


「そういうことらしいから、夏休み中楽しみに待っとけよ!」


2人の女子生徒の卑劣な笑い声がいつまでも教室に響き渡っていたのだった。
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