人格矯正メロディ
寸前のところでその手をすり抜けて、あたしは部屋から駆け出していた。


勝手知ったる海の家だ。


あたしは部屋を出て正面の階段を駆け下り、廊下を走って玄関にたどり着いていた。


後ろから海が大きな足音を立てながら追いかけてくる。


それはさながら大男が子ウサギを追うような構図だった。


子ウサギなんて、1度捕まってしまえばもう逃れることはできないだろう。


あたしは玄関先でもたつくのが嫌で靴を右手に握りしめ、そのまま外へと駆けだした。


それでも海の怒号は後ろから追いかけてくる。


一瞬振り向いて確認してみると、真っ赤な顔をした海があたしを追っているのが見えた。


しかし、その靴は完全にははかれていなくて、脱げかけていた。


それが幸いし、海はあたしを追い掛けている最中に転倒してしまったのだ。


あたしは一気に加速し、そのまま裏路地へと身を隠した。


素足のまま走っているので足裏がしびれるように痛むが、気にしている暇はない。


少しでも海から距離を離すことを一番に考えて懸命に走った。


「あれ、星羅?」


その声にハッと息を飲んで急ブレーキをかけて立ち止まった。
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