人格矯正メロディ
咄嗟に外へ出ようとしたが、遅かった。


ドアは何かで固定されビクともしない。


「ちょっと、開けてよ!」


自分の声がトイレ内に反響する。


「あははっ! 星羅ちゃんって人の顔が見えないと生意気だよねぇ」


香澄の声にあたしは押し黙ってしまいそうになった。


香澄の言う通りだ。


目の前に人がいればなにも言えなくなってしまうのに、こうしてトイレのドア越しなら気持ちをぶつけることができる。


「せっかくだからずっとそこにいればいいじゃん」


今度はマチコの声が聞こえて来た。


きっと、何人かとりまきたちも一緒にいるのだろう。


嫌な予感がしてあたしは背中に汗が流れて行くのを感じた。


「そこにいれば、言いたいことが言えるんだもんね!」


ナツコが笑っている。


「出して!」


あたしはトイレのドアを叩いて声を上げた。


その声に反応して外からは笑い声が返って来る。
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