人格矯正メロディ
どうにかドアを開けられないか、叩いたり体当たりをしてみてもダメだった。


一体どうやってドアを塞いでいるんだろう。


焦りと恐怖が湧き上がり、個室の上部へと顔を巡らせた……その瞬間だった。


青いバケツが視界に入ったかと思うと、冷たい水が頭上から振ってきたのだ。


それはあたしの全身を濡らし、異臭を放っている。


「あはは! くっさー!!」


香澄の笑い声が幾重にも反響する。


茶色く濁ったそれは汚水のような臭いがするが、水と一緒に落下してきた雑巾を見て少なからず安堵してしまった。


これは糞尿にまみれた水ではない。


掃除道具で汚した水だ。


こんな汚い水をかけられて安堵してしまう自分が情けなかった。


やがて外の笑声が消えて、あたしはトイレに1人残されてしまったのだった。
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