不器用オオカミとひみつの同居生活。
「それ、治んの?」
「ああ、もしかしたら跡残るかもしれないって」
先日、刈谷先生に言われた言葉を思い出す。
ちょうど花平くんはいなかったから、聞いてないんだ。
無表情でおでこに手を伸ばされる。
傷の具合を確認するのかな?と思ってされるがままに差し出したけど。
触れる前に、その手が一房の髪をすくい上げて。
私の黒髪がさらりと揺れた。
「花平くん?」
普段見慣れてるはずなのに、まるで見たことのない瞳。
そっと髪にキスを落とされて。
まるで流れるように自然な動作で、
たぶんドラマでもこんな綺麗なシーンはないんじゃないかってくらい絵になっていた。
離れていく花平くんの目のなかに私が映っている。
どこまでも深い海原に浮かんでいるようで、
なぜか胸がざわざわと波立つのを感じたのだった。