不器用オオカミとひみつの同居生活。
冬の日の朝は好きだった。
ぴんと張ったような寒さはあるけど、どの季節のどの時間よりも空気が澄んでいるように感じられるから。
おそらくソファのあとがついているであろう頬を撫でながらむくりと起き上がる。
ぼーっとする頭でアラームを止めて、机の上に置かれている物に視線がうばわれた。
リモコンの横にあるのは、陽気なスノーマンだった。
「はろー……」
今はハローじゃないでしょと雪だるまにツッコミつつ、ゆるりと視線をベッドにうつした。
続いてソファに目を向ける。
……私、ベッドで寝てたっけ。
つるつるの頬を触りながら、その姿を探した。
わたしの使っているベッドはもちろん、ソファにも人の影はない。
「……昨日のは夢?」
返事が返ってくることはなかった。
上下ともたたまれたスウェットにも、ぬくもりの欠片すら残されていない。
まるで霜が太陽に溶かされるように、宙に舞い上がった粉雪が消えるように。
おぼろげで空想的な存在だった
彼はいなくなっていた。