恋人のフリはもう嫌です

「絶世の美人に言い寄られても、なびかない?」

 思わず吹き出すと、彼女に睨まれた。
 睨んでもかわいいだけだと、本人は気づいていないけれど。

「なびくわけないだろう」

「すっごくスタイルが良くて、その、あちらの相性がいい方が現れても?」

 前に冗談で言った言葉を気にしている彼女が、かわいらしくて仕方がない。
 体が目的ではないと言いたいだけだったのが、捻れ曲がって伝わっている。

「気持ちがあるから触れたいと思う。って、俺が言っても信用がないのかな」

 いい加減に過ごしていた過去を彼女に知られているのは、痛いと思うけれど、それも身から出た錆だ。

「証明してみてください」

「それなら、結婚しようか」

「え」

 立ち止まって呆気に取られている彼女に、俺は重ねて言った。
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