恋人のフリはもう嫌です

西山透哉side

 健太郎に小言を言われるのは目に見えていて、極力顔を合わせないようにしていたが、ある時に捕まった。

 案の定、小言を言われる。

「見張っていてくれとは頼んだが、付き合ってくれとまでは言ってないぞ」

 想定内の小言に、平然と答える。

「いいだろ。結果オーライだ。他の男は寄って来ない」

「一番危険な男が傍にいるだろ」

 最初に気付くべきだろ。そこ。
 心の中で悪態をつくが、口には出さない。

 確かに歳が離れ過ぎているし、自分自身もこうなるとは思わなかった。
 つい、成り行きで。と言えばいいのか。

 腹立たしいから、健太郎には『ただの恋人役』だとは言うつもりはないけれど。

 健太郎しか見ていない千穂ちゃんに「俺と付き合おうか」だなんて、冗談でも言える雰囲気ではなかった。

 あー。ダサッ。
 社内一のモテ男が聞いて呆れる。
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