恋人のフリはもう嫌です

 舞い上がりそうな気持ちも、忘れてはいけない事実を思い出して急激に冷めていく。

 私は彼と付き合っているわけではない。
 ただのフリだ。

 女性関係が派手らしい彼にしてみたら、キスくらい造作もないこと。

 そこまで思って、小さくため息を漏らす。

 社内一のモテ男までは、彼の外見から結びつきやすく、納得もできる。

 けれど、目が合っただけで妊娠させられるだとか、歩く孕ませマシーンだとか。
 私が思い描く、彼のイメージとはかけ離れていた。

 勝手に、自分の理想を押し付けていたのかな。

 優しく微笑む西山さんを思い出し、胸の奥がチクリと傷んだ。
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