恋人のフリはもう嫌です
「まだ少し早いから、コンビニに寄ろう」
打ち合わせの時間は14時から。
すぐ近くまで到着していて、今が13時20分だから30分くらいは余裕がある。
「コーヒー買ってくるけれど、なにかいる?」
「いえ。私は」
運転席から、一向に出て行こうとしない西山さんに「まだ、なにか?」と、かわいげのない声が出る。
「顔が固い。気分転換に千穂ちゃんもコンビニ、行くよ」
渋々重い腰を上げる私の前を、軽快な足取りで彼は歩く。
店内に入るとコーヒーと言っていたのに、アイスが陳列されているところに立ち、ケースを覗いている。
彼がコンビニにいる風景も、アイスを物色している姿も、どことなく似つかわしくない。