恋人のフリはもう嫌です

「あー。うんざりするわ。お前の顔を見ていると、反吐が出る」

「それは熱烈な歓迎だな」

 涼しい顔をしている健太郎を横目に、俺はテーブルに突っ伏した。

「おい。でかい図体なんだ。寝てくれるなよ」

「丁重に抱きかかえて運べ。それで男色家だとか、変な噂が立てばいいだろ」

「なんだ荒れてるな。千穂ちゃんと、上手くいっていないのか?」

 上手くいっていないもなにも、全てが見せかけだからな。
 心の声に自分自身が虚しくなる。

「あの子はいい子だよ。真面目でさ。ただ、そうだな。俺側の問題」

「ハハ。拗らせてそうだよなあ。お前って」

 軽い相槌もなにもかもが気に入らなくて、閉め出すように目を閉じた。
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