恋人のフリはもう嫌です

 24時間開いているコーヒーショップに移り、彼女を席に座らせると彼女も幾分目が覚めたようだ。

「すみません。送迎役を命じられたのに」

 健太郎のやつ。

 酔っていた男にかわいいいとこを差し出すのは、違うだろ。と、どこにぶつけていいのかわからない苛立ちを心の中に燻らせる。

「すみません。役立たずで」

 しょげている彼女にまで気が回らず、だから酔った男は、と自分を戒める。

「違う違う。健太郎に苛立っているだけで」

「来てはダメでした?」

 捨てられた子犬のような瞳を向けられ、胸が苦しくなる。
 思わず胸元を押さえた。

「大丈夫ですか? 随分飲まれていたみたいで」

「ああ。平気。なにか買ってくるよ」
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