エリート上司を煽ったら極情愛を教え込まれました
「否定しても私は信じませんよ。だって私その時あなたの後ろにいたんですから」

「い、泉さん?」

「ですが、そのことについて私はとやかくいうつもりはありません」

「もしかして破談に?」

「いいえ。それはしません。予定通り結婚しましょう」

明久さんは内心ほっとしたように肩を落とした。

「ですが条件がございます」

「な、なんでも聞くよ」

「結婚しても専業主婦になるつもりはございません。あと明久さんがどなたと付き合っても文句は言いません。ですが、私には指一本触れないでください」

「え?それは?」

「そのままです。私はあなたの不貞を承知の上で結婚するって言ってるんです。それは誰のためだかわかりますか?会社のためです。私たちは完全なる政略結婚です。だから政略結婚なりの結婚生活をしようと言ってるんです。でもそれが受け入れられないのであればこの結婚は——」


「わ、わかった。わかったよ」

明久さんは疲労の色を隠せなかった。

だが私は止めなかった。

「結婚式も全面的に受け入れますのでお母様とよくお話になってお決めください」

私は立ち上がるとコーヒー代を置きホテルを出た。

この場は凌げたけど明久さんに全部話をした以上、あの人ならきっと洋介さんのことを調べるだろう。
そうなれば洋介さんとの関係も続けられなくなる。

彼は私のために協力してくれただけ。

私はそんな彼を好きになってしまっただけ。

今私にできることは彼を守ること。

そのためにはこの関係に終止符を打たなければならない。
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