エリート上司を煽ったら極情愛を教え込まれました
私は洋介さんの反応が気になってその様子を黙ってみていた。

「うまい」

「え?」

「この卵焼きめちゃくちゃうまい」

「本当?」

「ああ、これも美味しそうだな」

洋介さんは片方の手におにぎりをもち、もう片方でおかずを取り「うまいうまい」と連呼しながら勢いよく食べる。

その姿は豪快ながらも美味しそうに食べる姿に胸がいっぱいになる。

今まで自分の料理を食べてもらう機会などなかった。

人に美味しいと言われることがこれほどまでに幸せだと思ったのは初めてだった。

「おい、泉は食べないのか?だったら俺が泉の分も——」

「ダメ!ちゃんと半分こして」

「はいはい」

洋介さんが少し拗ねながらも箸を休めることはなかった。


すごく楽しい。

すごく苦手だった人なのに。

一緒にいるのがすごく楽しい。


**

「お前の担当している店の売り上げが落ちてるぞ。前年比割れ。ちゃんと営業してるのか?」

「お言葉を返す様ですが、ミーティング等でこれからの接客方針を一人でも多くのお客様に喜んでいただける様、接客第一と決まったのは課長もご存知ですよね。
確かに先月は前年比を割りましたが、それはお客様一人の接客時間が延びたのが理由です。ですが満足度は前年比を圧倒的に超えてます」


**

「課長って外回りではあんなヘラヘラしてるんですね〜」

「はあ?あれのどこがヘラヘラだ。お前こそ営業だから、B Aじゃないからって無愛想にしてるんじゃないぞ」


とにかく私と洋介さんは顔を合わせば言い合いになっていた。

他の社員は課長がかっこいいから何か言われても「は〜い」って返事してたけど顔で仕事してるんじゃないし。

みんなが言わなくたって私は言いますからと勝手に敵意剥き出しだった。

だけどこうやって一緒にいると知らなかった彼の素顔を見ることができた。

最初はどうなることかと思っていたけど映画といいお好み焼きを食べた時といい良い意味で裏切られたというの率直な気持ちだった。
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