エリート上司を煽ったら極情愛を教え込まれました
「どうかした?」

こんなことを聞くくらいなのだから自分が見られていることなど気にもしていない様子。

「なんでもない」

否定するが声や表情でなんでもなくはないのは洋介さんには一目瞭然だった。

「あ〜。早く泉の作ったお弁当が食べたいな」

洋介さんが少し大きめの声でいう。

「え?」

「ここで並んで待っている時間よりも泉の作ったお弁当を早く食べたいんだけど……ダメ?」

私の顔を覗き込む洋介さんの甘えた顔。

ダメなんて言えるわけがない。可愛げのない投げやりな言い方は破裂しそうな鼓動を鎮めようとするためだった。

「すみません」

「すみません」

私たちはアトラクションの並ぶ列から外に出た。

そして芝生の広がるフリースペースへと向かった。

レジャーシートを広げている間に洋介さんは飲み物を買いに行った。

「お待たせ」

ペットボトルのお茶を買ってきた洋介さんが私の隣に座った。

そして二人の間にお弁当箱を置く。

「お口に合うかどうか……」

さっきまでは自信のあったお弁当も実際に広げるとちょっと味付けが濃すぎたかな?それとも薄すぎてはいないかな?と急に不安になる。

「うわ〜。うまそう。これ本当に泉が作ったの?」

「当たり前でしょ?」

なぜ素直に「うん」と言えないんだろう。

洋介さんの前だと強がってしまう。

「いや、信じてないわけじゃないんだ。だけどこれだけのお弁当を作るって結構大変だったんじゃないのかなと思って……ちゃんと寝たか?」

やばい。

昨夜はほとんど寝ていないのバレた?

寝不足の理由がワクワクドキドキしてなんて言えない。

「もちろん、寝たよ」

洋介さんは私をじーっと見つめる。

どうしよう。やっぱり寝てないってばれた?そう思ったのだが、洋介さんは視線を私からお弁当に移した。

「よし、じゃあ食べようか。いただきます」

手を合わせると、洋介さんは早速卵焼きを取った。
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