泡沫の記憶

シャワーから戻ると

朱夏はいなかった



カレーには手がつけられてなかった



玄関に靴はある

部屋かな…




トントン…



「朱夏…食べようよ」


…


「朱夏…?」



…



「朱夏、開けるよ…」



そっとドアを開けた



「朱夏…?」



「お腹空いてないから先に食べてて」



ベッドの上で朱夏は言った

オレに背を向けていて顔は見えなかった



「朱夏…怒ってる?」



「別に怒ってない
…
京ちゃんは?
なんでそんなに言うの?
…
京ちゃんのぶんの
カップラーメン食べちゃったから?
…
それなら
また今度買ってくるよ
…
もぉ私のこと心配しなくていいよ
ほっといてよ
自由にさせてよ
…
私だって…
私だって…
…彼氏ほしいよ…
…
ドア、閉めて…」



「朱夏…」



「ドア、閉めてよ
…
着替えるから…閉めてよ」



朱夏…



バタン…



ドアの閉まる音と共に

朱夏の泣き声が聞こえた



「朱夏…」



思わずドアを開けてしまった


朱夏の頬が涙で濡れてた



「京ちゃん…
…
出て行ってよ…
…
着替えるって言ったじゃん」



「いいよ
着替えて…」



「服、脱ぐよ!
裸になるよ!」



「いいよ
なんとも思わない
…
だって朱夏は…
オレの姪だよ
…
だから…」



「…
うん…
わかった
そーだね…
…
小さい時は
よく着替えさせてもらってたしね…
…
小さいボタンがなかなかできなくて…
京ちゃんが…
京ちゃんが…
…
…
京ちゃん…
ボタン…
外して…
…
涙で、見えないよ
…
京ちゃん…外してよ」



「うん…」



泣いてる朱夏に近寄った



ブラウスのボタンを
涙を拭いた手で外そうとしてた



上の2つが外れてた



3…4…

5…6…7…



「外れたよ…」



胸元が見えた



透き通った白い肌

子供の時と違って
柔らかく丸みを帯びてる



「京ちゃん…ありがと…」



「うん…」



オレは泣いてる朱夏を置いて

部屋を出た



< 163 / 297 >

この作品をシェア

pagetop