泡沫の記憶
シャワーから戻ると
朱夏はいなかった
カレーには手がつけられてなかった
玄関に靴はある
部屋かな…
トントン…
「朱夏…食べようよ」
…
「朱夏…?」
…
「朱夏、開けるよ…」
そっとドアを開けた
「朱夏…?」
「お腹空いてないから先に食べてて」
ベッドの上で朱夏は言った
オレに背を向けていて顔は見えなかった
「朱夏…怒ってる?」
「別に怒ってない
…
京ちゃんは?
なんでそんなに言うの?
…
京ちゃんのぶんの
カップラーメン食べちゃったから?
…
それなら
また今度買ってくるよ
…
もぉ私のこと心配しなくていいよ
ほっといてよ
自由にさせてよ
…
私だって…
私だって…
…彼氏ほしいよ…
…
ドア、閉めて…」
「朱夏…」
「ドア、閉めてよ
…
着替えるから…閉めてよ」
朱夏…
バタン…
ドアの閉まる音と共に
朱夏の泣き声が聞こえた
「朱夏…」
思わずドアを開けてしまった
朱夏の頬が涙で濡れてた
「京ちゃん…
…
出て行ってよ…
…
着替えるって言ったじゃん」
「いいよ
着替えて…」
「服、脱ぐよ!
裸になるよ!」
「いいよ
なんとも思わない
…
だって朱夏は…
オレの姪だよ
…
だから…」
「…
うん…
わかった
そーだね…
…
小さい時は
よく着替えさせてもらってたしね…
…
小さいボタンがなかなかできなくて…
京ちゃんが…
京ちゃんが…
…
…
京ちゃん…
ボタン…
外して…
…
涙で、見えないよ
…
京ちゃん…外してよ」
「うん…」
泣いてる朱夏に近寄った
ブラウスのボタンを
涙を拭いた手で外そうとしてた
上の2つが外れてた
3…4…
5…6…7…
「外れたよ…」
胸元が見えた
透き通った白い肌
子供の時と違って
柔らかく丸みを帯びてる
「京ちゃん…ありがと…」
「うん…」
オレは泣いてる朱夏を置いて
部屋を出た