片想いは今日でおしまいでいいよね?
「ひろちゃん、弘樹!!遅刻するよ」

美里が弘樹の玄関で叫ぶ。

「タイムリミット、あと1分!」

「今行く~!」

少女漫画の1コマのように、口にパンを加えて出てきた弘樹に、思わず、ぷっ、と笑ってしまった美里だった。

学校までは、約300mという好立地。弘樹は高校生になるのを心待ちにしていた。そして、今日は、夏休み明けの1日目。

「はひるぞ!みぃ!」

パンをくわえながら走れるのだろうか・・・という疑問は置いておいて、美里は弘樹について行った。弘樹は陸上部のスプリンター。本気で走ったら、美里なんかと一緒に行けない。かなり、スローダウンしてくれている。

滑り込みセーフで1-Aの教室に入る。2人の席は隣同士だ。幼馴染なせいで仲がいいのもあるが、なぜか、席も近くなることが多い。

「弘樹!なんだよ、そのパン!」

弘樹の親友の中井くんがちゃかす。

「で、夫婦でご出勤か」

「美里とは、そんなんじゃないよ」

ずきん・・・。照れ隠しで言っているのかもしれないが、あたしとの仲を否定されるたび、やはり傷つく。
< 2 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop